はじめまことの新文芸研究所

私が抱えている新文芸リストをもとに、新文芸を分析し記事にしていきます

第二回 レーベル分析 GCノベルズ編 (月猫通り2183ピックアップ)

 一週間ぶりのはじめまことです。前回のブログは敬体で書きましたが、無意識に常体で書いてしまってめんどくさかったので普通に常体で書くことにします。

 

 先週の記事でも書いた通り、このブログで使用しているデータセットは元々私の所属するサークルの会誌「月猫通り2183号」での特集記事に伴って作成されたものであり、このブログの目的の一つには5月に発売されるこの会誌の宣伝がある。というわけで、今日のブログは月猫通り2183のメイン企画であるレーベル分析から記事を4ページほどピックアップし、GCノベルズのレーベル分析を掲載することで企画の宣伝とさせていただく。手抜きとも言う。来週はしっかりブログオリジナルの記事書くから許して。

 例によって語の定義は省くが、「現役シリーズ」は過去(レーベルの平均刊行間隔×2)日間に新刊が出たシリーズを示す。下の基本情報の表はGCノベルズ単体でのデータだが、グラフにはGCN文庫のデータが含まれることに注意。

 

基本情報

発行:マイクロマガジン社

創刊年月日:2014年6月9日

累計作品数:77作品(うちweb発73作品) 累計冊数:363冊(うちweb発357冊)

代表作:『転生したらスライムだった件』『賢者の弟子を名乗る賢者』『転生したら剣でした』

 

累計 シリーズ数 61
冊数 325
シリーズ平均冊数 5.328
標準偏差 4.540
web発 シリーズ数 58
冊数 322
シリーズ平均冊数 5.552
標準偏差 4.545
非web発 シリーズ数 3
冊数 3
シリーズ平均冊数 1.000
標準偏差 2.000
  現行シリーズ 27
現行シリーズ率 0.443
  コミカライズシリーズ数 38
コミカライズ冊数 246
コミカライズ率 0.623
web発 コミカライズシリーズ数 38
コミカライズ冊数 246
非web発 コミカライズシリーズ数 0
コミカライズ冊数 0
  タイトル文字数中央値 14
  原作文字数中央値 1023211
  平均刊行間隔中央値 205
  平均書籍化日数 451.245
相関係数 原作pt数・書籍巻数 0.845
書籍巻数・コミカライズ巻数 0.694
原作pt数・コミカライズ巻数 0.853
書籍巻数・原作文字数 0.542
  作者数 58
  シリーズ数/作者 1.052

 

 GCノベルズは、2014年6月9日に、マイクロマガジン社によって創刊された。創刊ラインナップは『転生したらスライムだった件』『魔法書を作る人』。圧倒的知名度と人気を誇る「転スラ」を中心とした新文芸レーベル最大手の一角である。

 HJノベルス以上の少数精鋭で、GCノベルスとしてのシリーズ数はわずか58しかない。姉妹レーベルであるGCN文庫の創刊以降はそちらに作品が集中していることからGCノベルズでの新シリーズ数はさらに低下しており、21年から23年の間の新作数はたった9シリーズである。一方、GCN文庫は21年10月の創刊から二年少しで16シリーズ(文庫化を除く)とノベルスを補うように盛んに新作を放出している。特にそのうち半分は2023年に出ており、これからの新作数の増加が期待される。

 とはいえ、それだけ作品を絞っているだけあり、質は極めて高い。シリーズ平均冊数は4.73冊。GCN文庫が創刊される2021年まで開始年別シリーズ冊数で4冊/シリーズを切らず、下の現役シリーズ開始日分布で見ても2018年、19年、20年のシリーズがそれぞれ半分以上現役、2022年以降のシリーズは全て現役であるなど、シリーズの続刊率は極めて高い。巻数分布で見ても、現役シリーズで1巻が7作、2巻が7作、3巻が7作あることを考えると、もはやこのレーベルに打ち切りという概念が存在するのかどうかすら怪しくなってくる。「1,2巻あたりの打ち切りの壁を越えたらもうその後は完結まで書ける」くらいは本気であってもおかしくないレベルだ。巻数・原作ポイント数・コミカライズ巻数の間の相関係数も極めて高く、まさに理想的な新文芸レーベルと言えるだろう。今回GCN文庫を全レビューするレーベルに選んだのも、このような実績がある編集部であるからこそだ。

 元サイトに「ナイトランタン系列」が一定数あることからもわかる通り、エロ方面にも力を入れている。GC編集部には「1人1作エッチなラノベ」という掟があるとか。やはりエロは強いのか。他との競合を避けるようにミッドナイトやノクターンでもなろう系に寄った作品を的確に取っている。特にGCN文庫が創刊されたあたりからは、エロ方面の画像をシャドウバンを避けながら貼るためのアカウントができるなど、その傾向が強まっているように感じる。

 編集部のSNS展開もこのレーベルの特徴の一つ。様々な公式SNSを展開しているほか、X(旧Twitter)では編集者ごとのアカウントでも盛んに情報発信を行なっている。文庫レーベルと比べて宣伝量や企画の量で劣ってしまうことが多い大判レーベルだが、このレーベルはその辺もしっかりカバーしている。逆にいえばだからこそ売れているとも考えられるわけだが。

 続刊率や長編率が高いだけあって、原作文字数の中央値は110万字と極めて高い値となっている。平均値も127万字。この手の数値で極めて高いレベルで中央値と平均値が一致しているのは驚くべきことである。中央値は間違いなく全レーベルトップ。二作に一作は原作文字数が110万字越えているようなレーベルが他にあってたまるか。

 一方、GCN文庫は中央値42万字、平均値66万字とおとなしい。ラブコメ作品が多い影響が強いのだろうか。そういうわけで、GCN文庫が入った下のグラフでも2021年以降は数値が敵的に低下している。もちろん若いシリーズが多い影響はあると思うが。

 コミカライズ率も0.63とおそらく業界トップ。レーベル内訳では自社のライドコミックスのシェアはやや低く、他レーベルに分散しているが、これは初期からの傾向。最近では徐々にライドコミックスでのコミカライズが増加してきている印象がある。

 開始年別コミカライズ率で見ても2016年の時点で6割越え、2018の時点で8割越えと高い。コミカライズシリーズの開始年分布を見ても、2017年ごろから安定して生産されており、早くからコミカライズを重視していたことが窺える。